第81章 何を考えてるのかなんて本人しか分からない。
葵咲「一郎兵衛ったら、こんなに立派になって…!」
一郎「何故にお母さん口調?」
葵咲が泣いていた理由はこれだった。芝居内容に感動したのではなく、一から芝居小屋を立ち上げ、一つの公演をやり遂げた一郎兵衛に感銘を受けたらしい。
それを横で見ていた銀時は冷ややかな視線を送りながら、一郎兵衛に言葉を掛ける。
銀時「良かったな。念願の呼び捨てじゃねーか。」
一郎「俺の求めてる呼び捨てはそんな感じじゃねぇんだけど。」
一郎兵衛が求めているのは恋人同士の甘い呼び方だ。全然嬉しくない。まぁそれを言っても仕方が無いので、この場ではひとまず諦める事にする。
三人が団欒していると、中村も舞台横の扉から出てきた。その手にはお盆を抱えており、二人分の茶菓子が乗せられている。一郎兵衛はそれを受け取って銀時と葵咲に一皿ずつ差し出した。
一郎「ま、折角来てくれたんだし、これでも食ってゆっくりしてくんな。」
銀時「おっ。茶菓子まで。悪ィな。」
葵咲「折角だし頂きます♪」
一口サイズの大福餅をぱくっと口に運ぶ二人。ゴクンと飲み込むと、何やら異変が。
銀時・葵咲「ん?」
次の瞬間、ビビビビッと雷に打たれたような衝撃を受けた。
銀時・葵咲「!?」
そして二人は同時にガクッと意識を失ってしまった。