第81章 何を考えてるのかなんて本人しか分からない。
だが、今はそれ以上の何かがあるように感じる。その疑問が無意識に口から出たのだ。その呟きを聞いた葵咲は、膝の上にきゅっと拳を作って俯いてしまう。
葵咲「・・・・そんなの、知るわけないじゃん。」
少し様子が変わった葵咲に気付いた銀時は、再び葵咲へと目を向ける。
銀時「? 葵…」
葵咲「そんなの分かんないよ、分かるわけない。あいつが何考えてるのかなんて…。そんなの…こっちが訊きたいよ・・・・!!」
銀時「・・・・・。」
それは心底の慟哭。葵咲の悲痛な叫びは銀時にも深く刺さる。葵咲の気持ちが痛いくらいに分かった。その想いを受け取った銀時は沈黙を落とす。安易な言葉を掛けられないと思った。
そしてその沈黙で葵咲は我に返ったようにパッと顔を上げる。
葵咲「あ・・・・。ご、ごめん。」
つい感情的になってしまった事を詫びる。そして葵咲は目を瞑り髪をくしゃっと掻きながら言葉を続けた。
葵咲「…もしかしたら、今私がこうして悩んでる事も高杉の計算のうちかもしれない。そんな事考えだしたらキリがない。でも…どうしても…分からないんだ。高杉は私を…市村全左衛門についた私を憎んでると思ってたのに。殺したくて仕方ないはずなのに…なんで・・・・。」
銀時「市村についた?お前、高杉(やつ)と何が…。」
深く追求するつもりはなかったが、その言葉が気になり、つい聞き返してしまう銀時。だがここで場内に公演開始のブザーが鳴り響いた。
中村「大変長らくお待たせしました!只今より、プレミアム公演を開演致しまァァァァす!!」
葵咲・銀時「!」
舞台の幕が上がり、芝居が始まった。