第81章 何を考えてるのかなんて本人しか分からない。
時は現在に戻り、土方と松本の対話。土方は銀時と同じ反応をしていた。
土方「なっ!?どういう事だ…!?」
土方からの質問に松本は頷き、その詳細について語り始める。
松本「彼女の傷は、“内臓に傷の付かない刺され方”でした。」
土方「内臓に傷の付かない、刺され方?」
その言葉に疑問を浮かべた土方は鸚鵡返しになる。松本は前のめりになり、自らの膝の上に肘を置いた状態で低い声色に変えた。
松本「『凄い切り口だったぜ。思わず見惚れた。大事な筋肉や臓器を避けて、“切った”というより、“隙間を通した”感じだった。』」
土方「なんでドクター神谷?そのネタマイナー過ぎだろ。」
突然ぶっこまれるボケに土方は素でツッコミを入れてしまう。幽遊白書の仙水戦で登場した神谷の台詞兼モノマネだった。あまり似ておらず、そのクオリティは低い。
気を取り直し、松本は上体を起こして、普段の松本に戻って話を続ける。
松本「彼女の場合…」
大江戸病院の担当医は、こう語った。
医師「彼女の場合、たまたまだった。たまたま刺されたところに運悪く、動脈が通っていた。」
松本はその台詞をそっくりそのまま土方に告げる。
松本「だから…動脈を傷付けてしまい、出血量が多く、回復までに時間が掛かってしまった。」
土方「!」
詳しい事情を聞き、土方は切れ長の目を大きく見開く。松本は土方の反応を見ながらも、静かに説明を続けた。
松本「血管の太さや臓器等の大きさ、位置には多少の個人差があります。彼女の血管は少し太く、本来あるはずの位置から少しズレていた。それが原因です。彼女が華月楼に来た時、傷口を目にしていたので疑問だったんです。その療養期間の“長さ”に。本来なら動脈も傷付いていないはずですから、大半の人は即日退院だった事でしょう。だから私は、何か事情があって貴方か他の隊士が彼女を“わざと刺した”のかと思ったんです。絶対絶命な状態の中、一芝居打った、とかそういう理由でね。」
土方「!?」