第81章 何を考えてるのかなんて本人しか分からない。
それを見た松本は深いため息をつき、ぼそりと呟く。
松本「…ハァ。右も左もライバル(敵)だらけってわけですか。」
銀時「あ?」
本当に小さな声で囁かれた為、何て言ったのか聞き取れなかった。からかわれたと勘違いした銀時は眉根を寄せて松本を睨む。だが松本は首を横に振って視線を逸らした。
松本「いえ、こちらの話です。」
銀時「?」
二人は看護師の案内で葵咲の担当医のいる部屋へ。担当医は先に銀時が話を通してくれていた事により、診察対応の目処が立ったところで二人を待ってくれていた。
看護師は銀時と松本を部屋に通すとすぐに部屋から出て行く。松本は担当医の前にある椅子に腰掛け、銀時はその後ろの壁に背を預け、腕組みして立ったまま話を聞いた。
医師「市村葵咲さんの怪我について、だったね?」
松本「はい。詳しく教えて頂けますか?」
医師「・・・・・。」
当時のカルテを手に取りながら、医師は少し難しい表情を浮かべる。そしてカルテを机に置いて、松本へと向き直った。
医師「結論から申し上げましょう。彼女の怪我、本来なら入院する必要すらなかったはずです。」
松本「やはり…。」
銀時「なっ!?」
思い掛けないその言葉に、銀時は思わず腕組みを外す。一方松本は分かっていたといった様子で頷いていた。