第81章 何を考えてるのかなんて本人しか分からない。
時は遡り、数日前の事。松本は葵咲の刺され傷について詳しく話を聞く為に、大江戸病院へと足を運んだ。
松本は受付にいる看護師に、葵咲の担当医の所在について尋ねようとする。
松本「すみません、私は真選組の…」
「ああ、松本先生ですね?こちらに。」
松本「?」
看護師は松本の言葉を途中で遮り、席を立って受付から出てくる。松本がここに来る事を予め知っていた様子だ。近藤か土方が話を通してくれていたのだろうか。松本はそんな事を考えながら看護師の一歩後ろを歩く。
病院の廊下を少し進むと、壁に背を預けて腕組みをしている銀時の姿が。
銀時「よぉ。」
松本「銀時さん!何故ここに…。」
予期せぬ人物の登場に、松本は目を丸くする。看護師が銀時に軽く会釈をすると、銀時も松本に並んで歩き出した。松本が小首を傾げながら横を歩く銀時の顔を覗きこむと、銀時は自分がここにいる訳を口にした。
銀時「屯所での話が気になってな。」
なるほど、受付の看護師が“真選組”というワードだけで席を立った理由が分かった。先に来た銀時が話を通しておいてくれたのだろう。松本は袖に腕を通し、腕組みして再び前を向いた。
松本「聞いてらしたんですか。貴方もよく葵咲さんの事を気に掛けていらっしゃるようですね。」
銀時「まぁ腐れ縁だけどな。」
二人の会話を聞いていた看護師がプッと吹き出す。そして銀時の方を笑顔で振り返りながら言った。
「なぁにカッコ付けちゃってんですか~。坂田さん、毎日市村さんのお見舞い来てたくせに。」
銀時「余計な事言ってんじゃねェェェェェ!!」
この看護師は、葵咲が入院中もずっと受付にいた。それ故、銀時が毎日葵咲を見舞いに来ていた事を知っていた。
そんな風に足しげく通う銀時が、ただの“腐れ縁”とは思えなかったらしい。中二病のような発言をする銀時が可愛らしく思えて、なおもクスクスと笑っていた。そんな対応をされてはカッコつけたつもりが、まるで格好がつかない。銀時は恥ずかしさで顔を真っ赤にした。