第81章 何を考えてるのかなんて本人しか分からない。
突拍子のない松本の質問に、土方は時を止めたように目を見開いて固まってしまう。全くの想定外の言葉だった為、一瞬何を言われたのか理解出来なかった。
少ししてその意味が分かり、慌てて反論する。
土方「ハァァァァァ!?何で俺が葵咲(アイツ)を刺さなきゃなんねーんだよ!」
怒る土方を見て、松本は考え込むように顎に手を当てて唸りを上げる。
松本「…その様子だと、他の隊士というわけでもなさそうですね。」
土方「当たり前ぇだろ!…いや、まぁ確かに、最初はそうなりそうな状況ではあったけど!」
指摘された時はただ怒っていた土方だったが、途中から少し遠慮がちな発言へと変わる。ふとその時の状況を思い出したのだ。
そして鋭い洞察力のある松本は、土方の微細な変化を見逃さなかった。“そうなりそうな状況”という言葉も気になり、事情を把握する為に当時の状況について説明するよう促す。
松本「その時の詳しい状況を教えて頂けますか?」
土方「・・・・?」
最初はまたからかわれているのかと思った。だが真剣な表情のまま話を続ける松本を見て、冗談の類ではない事が分かった。土方は怪訝な顔を浮かべる。事情を詳しく知りたがる理由を先に尋ねようかとも思ったが、質問に質問で返すのはあまり良いものではない。それに松本の性格上、先に自分が納得した上で無ければ話さないだろう。それは先日葵咲が倒れた時の状況から容易に想像出来た。