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銀魂 - 雪月花 -

第80章 想いを示すなら百の口説き文句より一の態度


一郎「…ったく、しゃーねぇ。とりあえずさっきの呼び方でいいや。じゃあ行くぞ。」


そう言って一郎兵衛は葵咲の手を握って歩き出す。葵咲はがっちり掴まれた手に一度視線を落とした後、一郎兵衛の背へと再び視線を向けて声を上げた。


葵咲「あの、ちょ、手!」

一郎「手ぇぐらい良いだろ?寺子屋のガキだってお遊戯で繋ぐだろうが。」

葵咲「いや、まぁ…それはそうだけど、その頃とはもう違う…大人だし…。」

一郎「!」


確かに手を繋ぐぐらい子どもでもしている。だが、大人になった今 手を繋ぐ事と、子どもの頃のソレとは意味合いが全然違う。それはいくら天然の葵咲と言えど認識はあった。
一郎兵衛が足を止めて振り向くと、そこには照れたように頬を染めて俯く葵咲の姿が。それを見た一郎兵衛は内心の至極嬉しい気持ちを隠し、不敵な笑みを浮かべて葵咲の顔を覗き込んだ。


一郎「へぇー?俺のこと意識してくれてんだ?」

葵咲「べっ、別に!そういうわけじゃ…!」


これはなかなかオイシイ展開だ。全く相手にされていないと思っていた自分だが、男として意識してくれてはいる。全くの脈なしではないという事だ。もっと男として意識してもらう為に、一郎兵衛は攻めの一手を打ち込む。


一郎「なんだよ水臭ぇーなぁ。俺達、熱ーい口付け交わした仲だろ?」

葵咲「・・・・っ!!あっ、あれは…!事情が、事情で…っ。」

一郎「!」


そう、葵咲と一郎兵衛は華月楼の牢屋に投獄された際に、口付けを交わした事がある。敵の目を欺く為だったとはいえ、事実は事実だ。それを思い出した葵咲は、耳まで真っ赤にして眉尻を下げ、目を瞬かせる。これは良い意味で想定外の反応だ。今まで一郎兵衛の周りにはいなかったタイプの女性の反応。その初々しすぎる程の可愛らしい反応に、一郎兵衛のハートは射抜かれた。手を繋いでいない方の手で自らの口を覆い、目を見開く。


(一郎:まっ、マジでかァァァァ!なんだその反応!その顔は反則だろォォォォォ!!)


葵咲に釣られて一郎兵衛の顔も真っ赤に染まる。心臓もバクバク鳴っていた。高鳴った心臓を深呼吸で落ち着かせる。そして握っていた手を離し、葵咲に背を向けて髪をくしゃっと掻いた。
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