第80章 想いを示すなら百の口説き文句より一の態度
ちょうどその頃、松本クリニックに土方が訪れていた。土方はポケットに手を突っ込んだまま、医院の玄関口の扉に背を預けている。土方の姿を確認した看護師の一人が松本を呼びに行った。ちょうど患者の診察を終えた松本が診察室から出てきて土方へと声を掛ける。
松本「おや、土方さん。禁煙外来ですか?」
土方「んなわけあるか。俺ァ禁煙なんかしねぇよ。ちょっと話してぇ事がある。」
松本「・・・・・。」
どうやら冗談を言って良い雰囲気ではないらしい。それは土方の目を見れば分かった。瞬時にその空気を読んだ松本は、土方の話が至極重要な事であると悟る。そして恐らく診察の合間に話せる内容の話ではないだろう、とも判断した。
松本「午前の診療時間が終わってからでも?」
土方「構わねぇ。後で出直す。」
そう言って土方は一度医院から出る事にした。