第8章 出かける時はちゃんとその事伝えなきゃダメ。
土方「心配すんな。俺が買うんじゃねぇ。必要経費として落とす。」
葵咲「でも…。」
経費で落とすのもそれはそれで申し訳ない、そう思って素直に『はい』とは言えない葵咲。
土方「稽古も仕事のうちだ。」
葵咲は少し悩んだが、ここは素直に好意を受け取ろうと思い、お礼を言った。
葵咲「…すみません、有難うございます。」
土方「ああ、それから…。」
葵咲「?」
今度は少し言いにくそうに、少し躊躇って土方は言葉を詰まらせる。
だがやがて言葉を押し出すように言った。
土方「仕事以外では俺に対して敬語使わなくていい。…つーかやめろ。なんか落ち着かねぇんだよ。」
落ち着かないと言って誤魔化した土方だったが、敬語を使われる事に壁を感じていたのだった。
いや、壁を感じていただけではない。その心の距離からか、葵咲がある日ふと何処かへ行ってしまいそうな、そんな気がしていたのだった。
今度は何を言われるのだろう、葵咲はそう構えていただけに、思いもよらない提案に思わず吹き出してしまった。
葵咲「フフッ。分かりました。」
土方「おい。」
言ってるそばから敬語のままの葵咲。本当に分かってるのか?という表情で後ろを向き、睨む土方。言われて少しはにかんで頬を赤らめながら言った。
葵咲「…あ。…うん。分かった。」