第8章 出かける時はちゃんとその事伝えなきゃダメ。
土方「それから、何処か出掛ける時は必ず誰かに声かけてってくれ。」
葵咲「?」
土方「真選組がどういう組織かは知ってんだろ。隊士じゃないとは言え、お前にも危険が及ぶ可能性は大いにある。屯所を出るなとは言わねぇ。だが、気をつけろ。」
まるで子どもみたいだなと思ってしまった葵咲だが、真選組という組織も、自分の身を案じてくれている土方の心遣いも十分によく伝わってきた為、迷わず首を縦に振った。
葵咲「分かりました。・・・・・では、一つだけお願いがあるんですが…。」
土方「なんだ?」
その代わりにと言うように、葵咲は自らの願望を口に出した。
葵咲「たまにでいいので皆さんの稽古に、私も混ぜてもらえませんか?」
予想だにしていなかったお願いだ。何故そんな要求をするのか理由が分からず、土方は問い返した。
土方「…なんでそうなるんだよ。」
葵咲「守られてるだけではいられません、自分自身の身ぐらい自分で守れるようにしたいので。皆さんの足を引っ張るようなことだけはしたくないんです。」
土方「・・・・・。」
葵咲の言わんとしている事は分からなくはないが…。護り屋という仕事をしていて腕は立つと思われるが、それでも女性である。他の隊士達と一緒に稽古をさせても良いものだろうかと土方は考え、返答を悩んでいた。
葵咲「少しだけでもいいんです。このままじゃ身体が鈍ってしまいそうで…身体動かすだけででもいいんですけど。」
そこまで言われては仕方がない。葵咲の今後の事を考える意味でもその方が良いかもしれないと思った土方は、葵咲の願いを承諾した。
土方「分かった。」
葵咲「有難うございます。」
土方「そういやお前、稽古用の袴とか持ってんのか?」
葵咲「いえ。この着物でいいですよ。」
土方「着物じゃやりづれぇだろ。今度袴買ってやるよ。」
葵咲「えっ…。」
いくらなんでもそこまでして貰う義理はない。そんなつもりで稽古に混ぜて欲しいと言ったのではないのだが…そう思った葵咲は戸惑った。