第79章 普段お母さんがしている仕事はお父さんには出来ない。
倒れた葵咲を銀時が部屋へと運ぶ。葵咲が再び倒れた事を聞きつけ、部屋には近藤、土方、原田、山崎の四人が集まった。総悟はパトロールに出ていて不在。最初に松本が往診した際、葵咲の病状は大した事がないと聞き、パトロールに出たのだった。
皆が集まる間にばつが悪くなった万事屋は静かに退散…。そして数分も経たないうちに、連絡を受けた松本が再び駆け付ける。
葵咲は高熱にうなされ、寝込んでいた。命に別状は無いが、かなり悪化している。その事に松本は眉根を寄せてその場にいる者達を睨みつけた。
松本「貴方達…。」
今までに無い低い声。その声色からも怒りが読み取れる。原田と山崎は反射的にびくりと背中を凍り付かせた。
松本「一体どれだけ彼女に負担を掛ければ気が済むんです…?」
病人の前で叫ぶわけにはいかず、声量は抑えている。だがある意味こちらの方が数倍怖い。山崎は慌てて両手を前に出して弁解した。
山崎「俺達は少しでも葵咲ちゃんの助けに…。」
原田「そうそう、手伝いをしようと…。それに元はと言えば…」
言い出したのは万事屋。その事を言おうとするが、その発言は途中で遮られた。
松本「言い訳無用!今、貴方達に出来る事は“何もしない事”です!」
山崎・原田「ガーン!」
何もしない事が出来る事とは何とも言い難い。言葉の刃が深く胸に突き刺さる。精神的大ダメージを受けた。
ショックを受けてぬけがらのようになっている原田と山崎を尻目に、今度は近藤と土方にギロリと鋭い目つきを向ける。
松本「近藤さん、土方さん。ちょっと宜しいですか?」
土方「・・・・・。」
近藤「お、おう…。」
これ以上病人の前で騒ぐわけにはいかないという気遣いから、三人は部屋の外へと出た。