第79章 普段お母さんがしている仕事はお父さんには出来ない。
銀時の手に握られている服を指差しながら尋ねる葵咲。その質問に銀時は片眉を上げて答える。
銀時「あたりめーだろ。今時洗濯板はねーよ。」
葵咲「そうじゃなくて!」
そういう事を言っているのではない。いや、聞き方が悪かった。確かに先程の葵咲の聞き方ではそういう返答があってもおかしくはない。葵咲は髪をくしゃっと掻きながら、どう説明すれば良いかを考える。
葵咲「これ素材ウールだから普通の洗剤で洗濯機で洗っちゃ駄目で…」
銀時「?」
洗濯表示をきちんと見て洗濯しなければ素材によっては縮んでしまう。その事を伝えようとするが、掻い摘んでの説明では上手く伝わらない。だが今の葵咲に考える力は無く、自分でやった方が早いという結論に至った。
先程の神楽の時の様に仕事の続きを自らが請け負おうとするが、葵咲が発言するよりも先に、隊士に声を掛けられた。
「葵咲ちゃーん。掃除機って何処にある?」
葵咲「掃除機は倉庫の…」
中にあるのだが、奥の方にしまっている。口で説明するより一緒に取りに行った方が早い為、動こうとするが、そこでまた別の方向から隊士の気になる発言が耳につく。
「あれ?マイ●ット使ったらベタベタになった!」
葵咲「! それは薄めて使うやつだから…」
廊下を拭き掃除しようとしていた隊士が雑巾にマイ●ットを掛けていた。だが屯所にあるマイ●ットは原液。水で薄めて使わなければならない。しかも液を掛け過ぎだった。それを説明しようとするが、今度はまた別の場所で気になる声が上がる。
「うわっ、なんだこれ、臭っ!」
声の主へと目を向けると、“混ぜるな危険”の文字の書かれたキッチン●イターを混ぜている隊士がいた。
これは命に関わる大問題。有毒なガスが立ち込めてしまう。葵咲は慌てて隊士の方へ…
葵咲「それ混ぜちゃ駄目なやつゥゥゥゥゥ!!」
駆け出そうとする葵咲だったが、ぐらりとふらつき、とうとうその場に倒れこんでしまった。
銀時「おい!葵咲!?」
新八「葵咲さん!?葵咲さんんんんん!!」