第8章 出かける時はちゃんとその事伝えなきゃダメ。
葵咲「あの…。新たな料理を・・・・。」
土方「料理?」
葵咲「土方さんのお口に合うメニューを…。その、マヨネーズなしでもマヨネーズ沢山かけてる味になる料理を開発しようかなって…。」
土方「!」
どうやら葵咲は、土方の身体を思って創作料理を開発しようとしていたらしい。確かにこのまま毎日毎食、あの量のマヨネーズを摂取し続ければ、コレステロール過多で身体を壊す事は目に見えている。その事を気遣って密かに料理の研究をしていたのだ。
葵咲「コレ、出来上がってから言うつもりだったんですけど…。」
土方「・・・・・。悪かったな。」
葵咲「いえ!私が勝手にしてることなので。」
土方「俺の身体を案じてしてくれてんだろ?」
葵咲「・・・・・。」
ここで『はい』と言ってしまっては恩着せがましい。そう思って葵咲は何も言えずに黙り込んでしまった。
土方「けどお前がその前に身体壊しちまったら意味ねぇだろが。」
葵咲「すみません…。」
その言葉には返す言葉もない。土方から頼まれてした事でも、ましてや土方が望んでる事でもないのだから。
だがその気遣いに土方は嬉しく思い、小さく言葉を返した。
土方「…ありがとな。一応楽しみにしといてやる。」
葵咲「はい。有難うございます。」
土方の優しさを受け止め、葵咲は笑顔でお礼を言った。勿論、おんぶされている為、その笑顔は土方には見えていないのだが。
葵咲「あの、じゃあまた色々お仕事回してもらえますか?土方さんが他の皆さんにも言って下さったんでしょう?私が徹夜で仕事してると思ったから…。」
土方「あ・・・。」
そう言えばそうだった。葵咲の仕事量が多いと思っていた為に追加した局中法度。葵咲が深夜まで起きていた理由が他の者達から任された仕事でないのであれば、それを順守する必要もない。
葵咲「それなら、大丈夫ですから。今の仕事量じゃ申し訳なさすぎます。」
土方「…分かった。だが、くれぐれも無理はすんなよ?」
葵咲「はい。」
放っておくと無理をしてしまいそうな性格の葵咲。何故そこまで自分を追い込むような真似をするのかは分からないが、その性格自体はなんとなく分かってきた土方だった。