第79章 普段お母さんがしている仕事はお父さんには出来ない。
爆発音が気になった葵咲は、その場所へと足を向ける。
音の出所は食堂のようだ。葵咲と同じく爆発音を聞きつけた隊士達が食堂へと集まっている。葵咲が隊士達の後ろから食堂内を覗くと、厨房の電子レンジの前で神楽が唸っていた。
神楽「あれ?おかしいアル。」
「何やってんだァァァァ!!」
駆け付けた隊士の一人がツッコミを入れる。それも当然の話。電子レンジからは煙が立ち上り、食堂内は焦げ臭い臭いが充満。ちょっとした小火騒ぎである。だが神楽は悪びれる様子もなく、叫んだ隊士を睨みつけた。
神楽「厨房は女の戦場ネ。男子禁制ヨ。」
「それは物の例え!マジで戦場状態じゃねーかァァァ!」
葵咲「ちょ、神楽ちゃん!?何事!?」
何とか人ごみを掻き分け厨房へ。葵咲の姿を見た神楽は顔をパッと明るくする。
神楽「キサキサ!このレンジ壊れてるヨ。普通に温めただけなのに爆発したアル。」
明るくした顔はすぐさま困り顔に変わり、電子レンジの不調を訴える。だが葵咲はレンジを見るのではなく、思い当たる原因を口にした。
葵咲「温めすぎたんじゃないかな?このレンジ業務用だから温度が高めなの。だからちょっとの時間で良いんだよ。それにこのお皿はレンジ駄目なやつだから…。」
通常、家庭用電子レンジは500~1,000W程度なのに対し、業務用電子レンジは1,500~3,000Wと大出力。だが神楽がそれを知るはずもなく、葵咲の言葉の意味を理解出来ずに小首を傾げていた。
神楽「???」
葵咲「…あー、いや、いいよ。後は私がやるから。ありがと。」
説明する事が面倒というよりは、今の葵咲にはその気力がなかった。葵咲は後片付けと調理の続きを請け負い、神楽を厨房から出した。