第78章 天は二物も三物も与えはしない。
屯所の入口で土方が待ち受けていた。土方の足元には何本もの吸殻が落ちている。気が気でなかったのだろう。土方は少し苛立った様子で腕組みしていた。
この場に駆け付けた松本…、と、何故か一緒についてきた銀時の姿を見て更に苛立つ土方。だがそれを指摘している時間はない。土方は舌打ちをしながら、仕方なく銀時も屯所の中へと招き入れた。
葵咲には近藤と総悟が付き添っているとの事。三人は足早に葵咲のいる離れへと向かう。部屋に入ると葵咲は起きていた。布団に横になった状態で目を開けている。倒れたと聞いて焦った銀時と松本だったが、葵咲の意識がある事に一先ずほっと胸を撫で下ろす。
松本は葵咲の横へと腰を落とした。葵咲は布団の上で起き上がる。聴診器を当てたりする必要がある為、松本以外の面子には一度部屋から出てもらう。心音、喉の腫れのチェック、瞳の異常の有無等、一通りの診察を終えると松本は外にいた面々に声を掛ける。四人は再び部屋の中へと入った。
近藤「先生!葵咲は大丈夫なのか!?」
開口一番、松本に詰め寄る近藤。葵咲は少し呆れた様子で近藤へと目を向ける。
葵咲「近藤さん、大丈夫だってば。」
近藤「いいからお前は黙って寝てなさい!」
まるで過保護なお母さんだ。そんな近藤を呆れた視線で見つめる葵咲と銀時だが、松本は全くの無視。葵咲の検診結果に真剣に目を通していた。
そして松本は診断を下す。
松本「心配いりません、単なる疲労ですよ。日々の疲れからくるもの。滋養のある物を食べて、ゆっくり寝ていれば治ります。」
近藤「本当か!?」
安堵の表情でパッと明るい笑顔を浮かべる近藤。勿論、その場にいた土方、銀時、総悟も安心した表情を浮かべた。松本はその場にいる全員に視線を向けながら診断結果を話す。
松本「ええ。CTやMRIの結果も異常ありませんし、血液検査や尿検査も正常値です。」
近藤「そうか!良かった!」
心から安心した表情を浮かべる真選組の三人。だが銀時だけは眉根を寄せて複雑な表情を浮かべている。銀時はその不満な理由をすぐさま口に出した。