第78章 天は二物も三物も与えはしない。
葵咲「…うぎゃああああぁぁぁぁぁ!!」
土方「えええぇぇぇぇ!?」
驚かれる事に逆に土方の方が驚かされた。その事でやっと葵咲は思考の世界から引き戻されて現実世界に降り立つ。
心臓をバクバクさせ、冷や汗を垂らしながら土方へと向き直った。
葵咲「ななな、なんです?」
必死に平常心を保とうとするが上手くいかない。声は上ずり、表情は引きつっているのだが、土方はそれには気付いていない様子。土方はいつもどおりの調子で質問を投げ掛けた。
土方「こないだの検診結果、出たんだろ?」
葵咲「あ、ええ。出ましたよ!それが何かっ!」
(葵咲:どど、どうしよう、土方さんの顔まともに見れない…っ!)
ただでさえ土方の事を考えて赤面していたというのに、その本人が突然目の前に現れ、平常心を保てるはずなどなかった。
葵咲は恥ずかしさのあまり、土方から視線を逸らしてしまう。だがそれを土方は違う意味で捉えてしまった。
土方「? …まさか、何か良くなかったのか?」
葵咲「え?なんで!?」
土方「お前、何か隠し事してる時ゃ目ぇ合わせねぇだろ。」
葵咲「ち、違うよ!隠してない!」
まさかそんな風に捉えられるとは思っていなかった。確かにそういう癖はあるのだが、今回は断じて違う。だが意識しすぎて顔を見れないなんて言えるはずもない。
ただただ目を逸らす葵咲を見て、土方は眉根を寄せて葵咲の肩を掴んだ。
土方「じゃあ俺の目ぇ見て言えよ!」
土方は葵咲の瞳を覗き込む。かなり顔が近い。葵咲は思わず目の前の土方と夢の中での土方とを重ねてしまう。