第8章 出かける時はちゃんとその事伝えなきゃダメ。
葵咲「でもここからじゃ屯所まで結構距離ありますし、これ以上ご迷惑お掛けするわけには…。」
土方「ダラダラゆっくり歩いて帰って来られる方が迷惑だ。」
土方の事を気遣うように言い訳をしていた葵咲だが、本心はただおぶさっている事が恥ずかしいのであった。土方への気遣いが逆効果のように感じた葵咲は正直に自分の思いを告げる事にした。
葵咲「・・・・・でも…この格好…恥ずかしいです。」
土方「こないだの仕返しだ。」
葵咲「・・・・・。」
葵咲は土方と出逢った時の事を思い出した。土方はお姫様抱っこされた事をまだ根に持っているのか。
どちらにせよ、何を言っても土方は葵咲を下ろすつもりはないようだ。
土方「・・・・なぁ、なんでそんな無理すんだよ?」
葵咲「え?」
土方「この犬探してるヤツに会った。親切な女が一緒に探すって言ってくれたってな。」
葵咲「あ・・・。」
土方は自分と葵咲の横に並んで歩く子犬を見ながら言った。土方は葵咲の捜索中、この子犬の飼い主の少年に出会ったのだった。その少年の話では、自分の飼っている子犬が散歩の途中でいなくなってしまい、探していたのだという。その時、たまたま近くを通りかかった葵咲が、事情を聞いて一緒に探す事になったと聞いたのだった。
土方「仕事にしてもそうだ。色んなヤツの分まで抱え込んで夜遅くまでするこたぁねぇだろ。」
葵咲「あ、いえ…深夜まで起きてたのは仕事じゃないです。」
土方「?」
じゃあ何なんだ?そう問いかけるように土方は葵咲の次の言葉を待った。葵咲は少し言うのを躊躇ったが、やがて少し言いにくそうに言った。