第8章 出かける時はちゃんとその事伝えなきゃダメ。
その様子を見た土方は葵咲に声を掛けた。
土方「どうかしたのか?」
葵咲「あ、いえ…。なんでも。」
近藤「でも本当に、良かった、良かった!!」
そう言う近藤はまだ泣いている。
山崎「はいはい局長、鼻かんで。」
近藤の背中をさすりながらポケットティッシュを差し出す山崎。そして山崎は土方に変な気を遣うように近藤へと話を振る。
山崎「行きましょう、局長。沖田隊長にも早くこの事知らせてあげないと。」
近藤「おう!そうだな!!じゃあトシ、俺ら先に行って総悟に知らせてくるわ!!」
土方「ああ。悪ィな。」
山崎の気遣いには気付かない土方だったが、そのまま二人の後姿を見送った。
葵咲「あの、土方さんも先に行ってて下さい。」
土方「あん?」
葵咲「私、歩くの遅いですし…。」
土方「・・・・・。」
葵咲が少し右足を庇うように歩いている事に気付き、土方は葵咲の前でしゃがみこんだ。
土方「ん。」
葵咲「えっ?」
土方「足、痛むんだろ?素直にそう言えよ。」
そう言った土方は、葵咲をおんぶすると言わんばかりに背中を差し出す。
葵咲「や、でも、私重いですし…。」
土方「いいから早くしろって。」
葵咲「…は、はい。」
土方の勢いに気圧されてしまった葵咲は勢いで頷いてしまう。そして少し照れながら、土方の背中に乗っかった。土方は葵咲が自分にしっかり掴まった事を確認すると、葵咲をおぶって立ち上がった。
土方は重いと言われた事を鵜呑みにして少し気合を入れて立ち上がったのだが、あまりの軽さに驚いた。
土方「!? 軽ゥゥゥ!!どこが重いんだよ?むしろちゃんと飯食ってんのか!?」
葵咲「食べてますよ!」
そう反論する葵咲だったが、かなり怪しい。その時ふと土方は、葵咲は真選組に来る前、かなり老朽化したアパートで暮らしていた事を思い出した。もしかしたら生活費の為に食費を削っていたのかもしれない、などと思って勝手に納得した。