第8章 出かける時はちゃんとその事伝えなきゃダメ。
声のする方を見やると、山崎の他に、近藤と土方も一緒にこちらに向かって走ってきていた。三人はこの山の付近で、渋い緑色の着物を着た女が山の方へと歩いていくところを見たという目撃情報を聞き、山へと向かってきたのだった。
近藤「良かった!無事だったかァァァ!!」
土方「ったく、心配かけさせやがって。」
葵咲「心配…?」
近藤「当たり前だろ!?もしものことがあったらって探してる最中考えだじだら…ヴっ!」
そう言って近藤は涙を流しながら鼻をすする。
山崎「何言ってんですか、縁起でもない。でも、無事で良かったよ、ホント。」
葵咲「あの…ごめんなさい…。」
多くの人に迷惑を掛けてしまった事に深く反省し、葵咲は下を向いてしまった。
土方「違うだろ。」
葵咲「え?」
土方「こういう時は、ごめんなさいじゃねぇ。」
葵咲は言われた意味にすぐに気が付き、言い直した。
葵咲「有難う…ございます。私…こんなに沢山の人に心配してもらった事ってあんまりなくて…。嬉しいです。本当に有難うございます。」
葵咲の表情は本心からの喜びに溢れていたが、何処か寂しげな表情も含んでいた。それに気付いた土方だったが、敢えて何も言わず、話を逸らすように言葉を発した。
土方「そういやぁ総悟のやつはどうした?」
山崎「沖田隊長なら、廃ビルの方に探しに行きましたよ。」
土方「そうか。」
真選組が葵咲を迎えに来たのを見届けると、銀時は手をひらひらと振りながら歩き出した。
銀時「じゃあ俺ァ帰るわ。」
葵咲「あっ!あの…!」
銀時「…またな。」
葵咲「・・・・・。」
改めて御礼を言おうとした葵咲だったのだが、銀時の背中を見ると、何故か何も言えなくなってしまい、黙り込んでしまった。