第76章 人に教える事は自分の勉強になる。
場所は変わり、華月楼。
目覚めた華音は頭を抱えながら上体を起こす。その時、腹部に鈍い痛みが走った。
華音「つっ。」
ゆっくりと目を開けながら、周りの様子を確認した。自分から少し離れた位置に銀時達が寝そべっているのを発見し、その傍らに男が立っている姿を目にする。
土方「テメー、何してやがる?」
その男とは土方だった。
この場に駆け付けた土方は無防備に横たわる銀時と葵咲の傍にいた華音に異様な空気を感じた。華音の服装や所作等、現場の状況、そして土方独自の直感から彼を敵と判断し、蹴り飛ばしたらしい。
無防備なところに攻撃を受けた事が相当大きかったのか、華音は脂汗を垂らしながら土方を睨みつける。
華音「…まだ仲間がいたのか。君もここの花魁ってわけではなさそうだけど。」
土方「質問してんのはこっちだ。何してんのかって聞いてんだよ。」
土方の怒りは頂点に達している。それは初対面の華音にも感じ取れるほど。土方から滲み出る雰囲気で容易に察する事が出来た。だが華音は土方を警戒するのではなく、むしろ挑発するような発言をする。
華音「別に?ちょっと眠りについてもらおうと思っただけだよ。永遠のね。」
土方「!…てめぇ…!!」
華音「安心しなよ。君もすぐに彼らの元に…」
全てを言い終わらぬうちに土方は動いていた。土方は華音の懐へと走りこみながら素早く抜刀する。そして華音の胸元を斬りつけた。
華音「!?」
咄嗟に後ろに身を引いて交わすが、土方の攻撃全てを避ける事は出来なかった。先程蹴られた攻撃も効いているようだ。致命傷は避けれたが、かなりの深手を負った。
土方とは少し距離を置き、華音は斬られたところに手を当てて屈みこむ。顔を上げて土方を睨むが、それ以上の形相で土方は華音を睨みつけていた。
土方「これ以上、葵咲(こいつ)にゃ指一本も触れさせねぇ…!」
華音「くっ!」