第76章 人に教える事は自分の勉強になる。
土方の家で勉強を始めて一時間が経過。
二人は数学の勉強中。
実際の葵咲は数学の勉強から離れて何年だろうか?そんな状態で数学の問題に触れて解けるはずもない。そもそも3Zは理系なのか?文系なら数学はないのでは?等というツッコミは無しの方向で。この幻想世界においてそういった概念はないという事で。
少し話が逸れたが、初っ端から行き詰まる葵咲に土方は優しく丁寧に問題を解いて見せた。
土方「…で、これはこっちの公式当てはめりゃ解ける。」
葵咲「・・・・・。」
お手本で解いてくれる土方の手元をじっと凝視する葵咲。その表情はいつになく真剣だが、とても難しい顔をしていた。
それを見た土方は心配そうな顔で葵咲の瞳を覗き込む。
土方「分かりづらかったか?」
自信満々に解説したにも関わらず、伝わっていないのなら哀しいところ。土方がこの日の為に準備していたのは部屋の片付けや清掃だけではない。テスト勉強もまた然りだ。勉強を見る事を大きく買って出たのに、いざ始めれば分かりませんでした、では格好がつかなさ過ぎる。葵咲に何を問われても良いように、事前に猛勉強していたのだ。
だが“自分で解ける事”と、“人に教えて理解してもらう事”は、また違う。分かっているつもりが分かっていなかったり、分かってはいるが上手く説明出来なかったり。人に教える事は自分の勉強にも繋がり、大きな成長をもたらすもの。
土方はどのように説明すれば分かってもらえるだろうかと考えていると、葵咲は真剣な表情のまま口を開いた。
葵咲「どうしたの、土方君。バカじゃなかったの?」
土方「喧嘩売ってんのかテメー。」
先程の自分の心配を返して欲しい。それより何より、どれだけ自分がバカだと思われているのか、それが哀しくなった。