第8章 出かける時はちゃんとその事伝えなきゃダメ。
銀時は葵咲を探すうちに街から外れ、近くの山の麓の方まで走ってきていた。
銀時「この先は…山だな、何もねぇか・・・。」
クゥーーーン。その時、何処からか犬の鳴き声が聞こえてきた。
銀時「…犬?」
鳴き声の雰囲気から、犬の様子が少しおかしい事に気付き、銀時は叫んでみた。
銀時「おーい!誰かいんのか!?」
ワンワン!!犬はまるで自分のいる場所を示すかのように吠える。銀時は犬の声のする方へと向かった。
山道を進んで行くと犬の声が近くなる。だがそう思って奥へ進むと、今度は犬の声が遠のいてしまった。辺りをきょろきょろと見回し、もう一度よく犬の声を聞くと、どうやら山道の崖下から聞こえているようだった。崖の下を覗き見ると、そこには子犬を抱えながら崖の上を見やる葵咲の姿があった。
葵咲「あっ!万事屋さん?どうしてここに…。」
銀時「!?おまっ、何やってんだよ。」
葵咲の無事な姿を見た銀時は、安堵のため息を漏らした。
葵咲「えっと…ワンちゃん探しに来て、助けようとしたら崖から落ちちゃって…足くじいちゃったみたいです。普段ならこれくらいの崖上れるんですけど…。」
崖の高さは5メートルぐらいあるが、岩も凸凹としており、ところどころに木も生えているので、手や足を掛けて上ろうと思えば上れる高さだ。
銀時「ったく、お前は。」
そう言って微笑む銀時はとても温かい表情をしていた。そして銀時は崖を滑り下りてきた。
銀時「ほら、掴まれよ。」
葵咲「でも…。」
銀時「足怪我して一人じゃ上れねぇんだろ?」
葵咲「す、すみません。」
銀時「お前は俺の懐にでも入っとけ。」
そう言って銀時は子犬を自分の着物の懐へと押し入れた。葵咲は少し照れながらも銀時の首元へと手を回す。銀時は葵咲の腰に手を回し、しっかりと抱えながら、崖を上っていった。
葵咲は銀時にしっかりと捕まりながらも、何かを考えるようにじっと銀時の横顔を見つめていた。
そして崖を上りきり、手を放したところで葵咲は深々と頭を下げた。銀時は葵咲を横目に見ながら子犬を懐から出して地面に放す。
葵咲「すみません、ご迷惑をお掛けして…。」
ちょうどその時、山崎の声が聞こえてきた。
山崎「葵咲ちゃーーーんっ!!」