第75章 大物が釣れたら後の魚への興味は一気に失せる。
気まずい空気を取り払おうと、少し慌てた様子で土方が会話を繋いだ。
土方「そ、そーいやお前、テスト勉強はかどってんのか?」
葵咲「勉強?」
土方「来週から中間テストだろ。」
葵咲「え?…えええぇぇぇぇぇ!?」
テストなんて聞いてない。いや、知らない。赤面から一変、顔を真っ青にする葵咲に土方は呆れ顔を浮かべる。
土方「おいおい、それも忘れてたのかよ。」
葵咲「聞いてないし!いつからそんなのあんの!?何処の惑星(ホシ)の常識!?」
土方「この惑星の常識だよ!どんな責任転嫁だ!!」
そんな土方のツッコミは葵咲には届いていない。全くのゼロ勉、というより銀魂高校(このせかい)の勉強を全然していない葵咲にとってテストなんて恐怖でしかない。土方のツッコミを受け入れる余裕等なかった。
一週間という短期間でどこまで出来るのか、考えてみるも答えには辿り着かずに言葉を失う。
土方は少し考えた後、葵咲に提案を施した。
土方「じゃあ明日から俺ん家で一緒に勉強するか?」
葵咲「え?」
土方「…あ゛!いや!別に変な意味じゃねーから!勉強教えてやるってだけだから!!」
唐突な提案にきょとんとする葵咲を見て、土方は自分の言葉を振り返る。カップルになった矢先、家に連れ込もうとする言動に変な誤解を招いたと思い、慌てて言葉を取り繕った。
だが葵咲はその意味で捉えていたわけではない。眉根を寄せて土方の顔を覗き込んだ。
葵咲「土方君って人に勉強教えられる程頭良かったっけ?」
土方「上等だコラァァァ!!何でも教えてやらァァァ!!」
喧嘩を買うような態度で請け負う土方。言動云々はアレだが、葵咲の事を気遣う気持ちは強く伝わった。
葵咲は土方の好意を嬉しく思い、笑顔でお願いした。
葵咲「じゃあお言葉に甘えちゃおっかな。」
土方「…っ!」