第74章 夢は起きた瞬間に忘れてしまう事が多い。
いない人物を登場させてまで嫌なのか、そういう視線で土方は葵咲を睨む。それに対して葵咲は素直な気持ちを伝えた。
葵咲「いや、あの、急で心の準備が出来てないって言うか…!」
心の準備も出来ていなければ、下着の準備も出来ていない。せめて明日以降にしてもらえないだろうかと願い出ようとするが、言うより先に土方が葵咲の腕をグイッと引き寄せ、半ば強引に唇を重ねた。
葵咲「んっ!?んんっ!」
息が止まるほどの熱いキス。その口付けは数十秒も続いた。
そして土方はゆっくりと唇を離し、葵咲の瞳を覗き込む。
土方「…嫌か?」
葵咲「っ!いっ!嫌じゃ…嫌じゃない…けど…。」
やっぱり下着の事が気になる。こういう事は始めが肝心だ。勝負下着で挑みたいし、ガッカリされたくはない。でもそんな事を口には出せない。
葵咲が口ごもっていると、土方は少し申し訳なさそうな顔を浮かべながら顔を背けた。
土方「デート、した事なかったもんな。お前に付き合ってる実感ねぇのも仕方ねぇっつうか…。」
葵咲「え!?あぁ!デ、デートね!!」
先走りすぎた自分が超絶恥ずかしい。穴があったら入りたいとはまさにこの事だ。
土方は葵咲の勘違いには気付いておらず、片眉を上げて再び葵咲へと視線を向けた。
土方「? 何だと思ったんだよ。」
葵咲「いや別に!!でも土方君、風紀委員でしょ?寄り道とかして大丈夫?」