第74章 夢は起きた瞬間に忘れてしまう事が多い。
バツが悪そうに葵咲が押し黙っていると、土方は一つため息をつき、葵咲へと向き直って注意を促した。
土方「これ以上デカくしねー為にも、暫くは関わらずに大人しくしとけ。」
葵咲「・・・・・。」
土方の注意は理解出来なくは無いが、素直には頷けない。自分が悪いわけではないのに何故自粛しなければならないのか。
納得がいかないといった様子で葵咲が地面を見つめていると、土方は唸りを上げながら自らの髪をクシャッと掻いた。
土方「…っつーか!俺が嫌なんだよ!」
葵咲「え? なんで?」
突飛な発言に葵咲は再び目を丸くして顔を上げる。それに対して土方は至って真剣な表情で葵咲に視線を合わせた。
土方「なんでもクソもねーだろ。自分の女がアバズレの噂立てられて良い気分の男が何処にいんだよ。」
葵咲「そっか、それもそだね。」
今度は納得の出来る発言に、フンフンと頷く葵咲。だが頷いたところで想定外のフレーズが混じっている事に気付く。
葵咲「…え?女?…えぇっ!? かっ、彼女ォォォォォ!?」
自らを指差しながら驚愕の表情を浮かべる。その驚きは先程銀時とデキていると言われた時より大きい。そんな葵咲の態度に土方は眉をピクリと動かし、引きつり笑いを浮かべた。
土方「おい、まさかそれも忘れたとか言うんじゃねぇだろうな?」
葵咲「えっと…いや、忘れたも何も…そう、だっけ?」
葵咲は眉根を寄せて首を傾けながら真剣な眼差しを土方へと向ける。それを見て土方はとうとう叫んだ。
土方「おいィィィィィ!!つい先週の話だろうが!お前、俺と付き合っても良いっつっただろ!!」
葵咲「え?…えええぇぇぇぇぇ!?」