第74章 夢は起きた瞬間に忘れてしまう事が多い。
埒が明かないといった様子で服部は教室内の生徒に呼び掛ける。
話の通じない服部に、今度は葵咲が苛立った様子で口を尖らせた。
葵咲「ちょっと、私は真剣に話してるんですよ。私確か銀ちゃんと一緒に華音ってヤツと戦って…あれ?華音って・・・・誰ですか?」
突然記憶があやふやになる葵咲。夢から目覚めた時と同じような感覚だ。起きた直後は鮮明に覚えていた夢の内容が、頭が冴えてくるうちに薄れていく…。知らない人間が出演していれば、その顔や名前すらも曖昧になってゆく。
そんな状態に陥った葵咲は、片眉を上げて再び服部の顔を眺めた。服部は至って低いトーンの声で教室内の生徒に呼び掛ける。
服部「さっきの訂正。誰かコイツ病院に連れて行って来い。」
葵咲「???」
頭の中で状況を整理しようとして、黙りこくってしまう葵咲。服部は呆れたように溜息を吐いて自らが折れた。
服部「ハァ。もういい。とりあえず座れ。」
ハハハと教室内に笑い声が上がる。ワケが分からないまま、葵咲はひとまず着席した。
そんな葵咲の様子を、少し離れた席に座っていた土方は笑い声も上げず、頬杖を付いてただ眺めていた。
土方「・・・・・。」