第73章 記憶を消しても罪は消えない。
上の空になっている理由がバレているとは思っていなかった。
図星の土方はしどろもどろになりながら、取り繕うように弁解する。だがそれは逆効果だった。
山崎「それ墓穴掘っちゃってますよ。誰も“旦那との事”なんて言ってません。」
土方「っ!!」
鋭いツッコミに言葉を失ってしまう。そんな土方を山崎が更にからかおうとするが、それよりも先に近藤が真剣な顔付きで言った。
近藤「いや、冗談抜きでこの件、ヤバイ臭いがする。」
土方「!」
近藤「万事屋の事だ。心配はいらんとは思うが…。」
確かに近藤の言うとおり、土方も何かざわつくものを感じていた。眉根を寄せて俯いていると物凄い音が鳴り響く。
ドゴォォオン!!
音に驚いた近藤は思わず叫んだ。
近藤「何の音だ!?」
山崎「爆発音みたいな…。」
土方「っ!!」
居ても立ってもいられなくなった土方は、何も言わずにその場から駆け出す。近藤は慌ててその背に呼び掛けた。
近藤「トシ!!お前も無茶はするなよ!」
土方「ああ!分かってる!!」
土方は振り返らずに答え、そのまま部屋から飛び出して行った。
(土方:葵咲…無事でいてくれよ…!!)