第72章 誰もが心にラフテルを描いている。
不審な少年と対峙する銀時。かもし出される雰囲気から、この少年が只者ではない事は明らかだ。
緊迫する空気が流れているが、銀時は少年の放った“商売”というワードを聞き逃さなかった。
銀時「商売?…まさか、てめぇがクスリを…。」
問い返す銀時に、少年は焦る様子も悪びれる様子も無い。むしろ感心したような歓喜の表情を見せた。
「へぇ!リフレインのこと知ってるんだ~。意外だな。」
銀時「リフレイン?何か別のアニメで聞いた事ある薬の名前なんだけど。」
コード●アスで出てきた麻薬の名前そのままである。過去の楽しかった夢を見る事が出来る麻薬だ。確かに聞いていた薬の症状と似ている気もするが、まさかその名が出てくるとは。銀時の素のツッコミに、少年は少し不満げな表情を浮かべる。
「いやいや、こっちが先だから。考えたのはこっちが先なんだけど、世に出すのがちょっと遅れちゃったんだよ。」
銀時「嘘つけ。盗作者は皆そう言うんだよ。」
呆れるような言い訳常套句だ。
まぁ名称はさておき。気を取り直して銀時は真剣に少年と向き合う。
銀時「てめぇ何者だ?」
「僕の名前は華音(カノン)。以後お見知りおきを。」
自らを“華音”と名乗る少年は銀時に更に数歩近付き、紳士のような振る舞いで丁寧に頭を下げる。先程までは暗闇の中、少し遠目に見ていた為にその風貌は何となくしか分からなかったが、近付いた事で華音の顔もはっきり認識出来た。色白で色素の薄い、ぱっちりとした瞳。あどけなさの残る顔だ。髪はサラサラのボブ。色は暗くてはっきりとは分からないが、恐らく金髪だ。間違いなく天人だろう。
華音は口元に右手を当ててクスクスと笑いながら言葉を続ける。
華音「君、面白いから格安料金で売ったげても良いよ?」
銀時「いらねーよ。てめーがこの遊郭の黒幕か?」
華音「まさか。こんな汚い遊郭や吉原なんてちっぽけなモンに興味はないね。さっきも言ったけど、僕はただ商売しに来ただけだよ。僕達の組織はまだまだ駆け出しだから。莫大な資金が必要なのさ。」
銀時「組織だぁ?」
片眉を上げて不信感を募らせる銀時。華音は嘘を吐いている様子は無い。華月楼の裏の経営者というわけでもなければ、吉原を乗っ取るつもりもないのだろう。
華音はにこやかな笑顔を銀時へと向ける。