第71章 他人の願いを優先するのは難しい。
一方、葵咲の姿を追って部屋を出てきた銀時は華月楼の天井裏内を駆ける。銀時は葵咲や松島は普通の客室等にいるはずがないと判断し、天井裏へと上がってきたのだ。この天井裏についても先程獅童から話を聞いていた。
銀時「くそっ!あいつ何処行きやがった…!」
推測がハズレたのだろうか。そう思い、踵を返して天井裏から出ようとしたその時、近くに人の気配を感じた。
銀時「ん?」
姿は確認出来ないが確かに誰かいる。銀時がその気配に目を凝らしていると、影はコツコツコツと足音を立てて銀時の近くに歩み寄ってきた。
「そんなに慌てて何処行くの?」
暗闇ではっきりとした姿や顔までは見えないが、花魁でもなければ侍でもなさそうな風貌。江戸では見かけない服装だ。白っぽいスーツのような服に、マントをなびかせている。声の雰囲気から察するに男のようだが、まだ少し幼さを感じる。神楽と同じくらいの齢だろうか。身長は新八と同じくらいだ。そして銀時は近寄る影を睨みながら言葉を掛けた。
銀時「なんだてめーは。ここの花魁ってわけじゃなさそうだな。」
「あはは、やめてよ、花魁なんて汚い商品(モノ)と、この僕を一緒にしないで欲しいな。そういう君こそ、ここの花魁ってわけじゃなさそうだけど?天パだし。」
銀時「天パ関係ねーだろ!どういう意味だコノヤロー!」
「だって客取るの無理でしょ。その頭じゃ。」
銀時「天パ馬鹿にすんじゃねェェェ!天パを笑う奴は天パに泣くんだよ!!つか実写は小栗旬だぞコラァァァァ!!」
少年相手にムキになり、負け惜しみのような台詞を放つ銀時。少年は思わず吹き出して笑った。どうやら少年は銀時をからかっただけのようだ。
「あはは。そんなに怒らないでよ。ちょっとした冗談。ああ、僕は別に怪しい者じゃないよ。ただ純粋に地球人相手に商売しにきた天人だからさ。」
不敵な笑みを浮かべる少年は不穏な空気を醸し出していた。