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銀魂 - 雪月花 -

第71章 他人の願いを優先するのは難しい。


仕立て上げられる犯人像が獅童から菊之丞に代わった事は予測していたが、まさか葵咲自身も彼らのシナリオの役者に加えられていた事に少し驚いている葵咲。ここまで準備(シナリオ)が進められていたとは正直思っていなかった。その全貌を問い掛けると、松島はニヤリと笑みを浮かべ、山積みのダンボールに手を添えて答える。


松島「お嬢さんが獅童とワシの部屋に忍び込んだ目的は、華月楼で出回っているこの薬を探し出す事。その調査で華月楼に忍び込み、菊之丞に近付いていた。そうだろう?」

(葵咲:バレてた…!)


まさか潜入当初からその捜査がバレていたとは思ってもみなかった。始めから役者の一人として泳がされていたのだ。その事に葵咲は言葉を失ってしまう。そんな葵咲の表情を見届けた松島は、とても愉快といった様子で言葉を続ける。


松島「意外そうな顔だな。ワシが気付いていなかったとでも?お嬢さんが裏でコソコソ嗅ぎまわってた事は分かっていたんだよ。この薬の副作用に中あてられた友人等の仇討ちか?それとも自分を忘れられた事に対する腹いせか?」

葵咲「?」


松島は葵咲の潜入目的を問うが、その理由にピンと来ない。葵咲は眉根を寄せて言葉を詰まらせてしまった。その様子を見て自分が検討違いの発言をしている事に気付いた松島は、フイッと顔を逸らして目を瞑る。


松島「…まぁ理由は何でも良い。だからこそお前を利用させてもらう。邪魔者を排除するにはもってこいのシナリオだろう?こんな事なら、わざわざ芝居小屋を放火する必要なんてなかったな。」

(葵咲:!!)


ここで全てが繋がった。獅童を華月楼ここに連れ込んで利用する為に松島が獅童のいた芝居小屋を放火したのだ…!だが獅童を使う事が難しくなった為、全ての罪を菊之丞に着せる脚本へと書き換えた。そして薬の件を調べていた葵咲をその顧客として奉行所に突き出し、片付ける手筈を整えたといったところだろう。そしてその突き出す相手が鳥居…。鳥居もこの違法薬物売買の首謀者の一人で間違いない。捌く側の立場にある鳥居は、芝居小屋の放火同様、この件も裏で操作して自分達の罪を揉み消すつもりなのだ。
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