第71章 他人の願いを優先するのは難しい。
外の様子を窺っていた銀時だったが、思わず振り返って獅童に視線を向ける。獅童は苦しそうに冷や汗を垂らしながらも銀時へ笑顔を向けた。ただ単に自分が足手まといになるのが嫌というだけではなく、純粋に葵咲の事が心配だった。自分が助けに行きたいところだが、身体を動かす事さえ困難な状況。だからこそ銀時に頼んだのだった。だがそれを言ったところで銀時は獅童を一人放置してこの場を離れはしないだろう。先程獅童(じぶん)を担いで走ってくれた銀時を見ていた獅童はそれが分かっていた為、銀時を安心させるような台詞を放つ。
獅童「俺はしばらく隠れてる。心配すんな。アンタよりこの遊郭内は詳しいからよ。隠れてサボってた事もあるから、そういう穴場は分かってんだ。」
獅童の想いは、その表情や言動からひしひしと伝わってきた。彼を放っておけない気持ちもあるが、その想いを無下には出来ない。銀時は渋々承諾するように眉根を寄せながら首を縦に振った。
銀時「…分かった。絶対捕まんなよ、その方が足手まといだ。」
獅童「けっ、言ってくれるな。」
銀時「帰ったらあいつに美味い飯でも作ってもらえ。」
獅童「ああ、そうする。じゃあ頼んだぜ。」
そう言って銀時は一人、空き部屋から出て葵咲のもとへと向かった。