第71章 他人の願いを優先するのは難しい。
獅童は銀時に背負われながらも、顔を覗きこんで話しかける。
獅童「なぁ。アンタ、あいつの彼氏?」
銀時「…いや。ただの幼馴染だ。言っとくが、ガキの頃の写真とかやらねーぞ。」
獅童「興味ねーよ。俺は過去には捕われねぇ性質なんだ。…あいつ、何かに追われてんのか?」
逃げて生き延びているという葵咲の発言が気になっていたのだ。だがその質問に対して銀時は肯定するでも否定するでもなく、獅童に気力を与えるような言葉を返す。
銀時「さぁな。聞きたきゃ生きてこっから出て、あいつに直接聞け。」
獅童「…ハハッ、そうだな。」
銀時はなんとか花魁達を撒き、獅童の案内の元、誰も使っていない空き部屋へと身を隠した。獅童を背から下ろして外の様子を窺う。花魁達は刀を手にしながら銀時達の姿を探していた。
銀時「ったく、おっかねぇ花魁どもだな、おい。」
明らかにただの花魁ではない事を銀時も感じ取っていた。銀時しろやしゃの強さなら獅童を連れていても、花魁達を全て倒しながらなら逃げ切る事は容易いだろう。だが、何処まで花魁達を倒して良いものかの判断がつかない。この花魁達の中には、事情も知らずに利用されている者も大勢いるだろう。流石にそんな者達まで倒す事は気が引けた。どうしたものかと腕組みしながら唸っていると、獅童が銀時へと言葉を掛ける。
獅童「アンタ、葵咲あいつを助けに行ってやってくれねぇか?このままじゃ俺はアンタらの足でまといにしかならねぇ。」
銀時「けどお前…。」