第70章 隠し通路があるのは隠したい何かがあるから。
心が揺らぎそうになる。獅童がこの遊郭でナンバーワンを張っているワケがしみじみと分かった。単にイケメンで口説き文句が素晴らしいのではない。その真っ直ぐな熱い魂に皆惹かれているのだろうと。
葵咲自身、素直に嬉しかった。こんな自分を大事だと言ってくれる事。自分を行かせない為の引き止め文句だったとしても、その真っ直ぐな気持ちが嬉しいと思った。
だが嬉しい気持ちをぐっと抑え、葵咲は獅童からゆっくりと身体を離す。
葵咲「…有難うございます。私を危険な目に合わせない為に、そう言ってくれて。」
獅童「違う、俺は本気で…!」
葵咲「でもダメですよ。諦めちゃ駄目です。恩を返した後にでも叶えたい夢なんだって…最初に誓ったんでしょう?」
獅童「それは…。」
葵咲を大事だと言ってくれた事も嘘ではないのだろう。だが、同時に夢も獅童にとっては大切なモノだった。葵咲は自らがその夢の実現の足枷になるわけにはいかない、そうも思い、獅童へと優しい笑顔を向ける。
葵咲「私なら大丈夫です。菊之丞さんを助け出したら、ちゃんと逃げ出しますから。それに、最初に約束したじゃないですか。必ず事件を解決に導くって。」
獅童「お前…。」
真剣な想いに獅童はそれ以上言葉を返せなくなってしまう。
二人がお互いの意志を確認しながら見つめ合っていると、葵咲の背後に先程撒いたはずの花魁達のうち数人が、二人を囲むように立っていた。
「やっと見つけたぜ。」
葵咲「! しまった…!!」
- 次回予告 -
絶体絶命のピンチ!!
二人は上手く切り抜ける事が出来るのか?
そして、菊之丞を救い出す事は出来るのか!?
次回もお楽しみに☆彡