第7章 上司が原因のパワハラは上司に相談出来ない。
葵咲「あっ、すみません、言い方が悪かったですね。私、幼い頃に両親を亡くしてて、親戚の家を転々としてたんです。その経緯で苗字が変わって…。吉田は幼い頃の苗字なんです。」
土方「!!・・・・・悪ィ。」
葵咲「え?どうして謝るんです?」
土方「嫌な過去思い出させちまったんじゃねぇか?」
幼い頃に両親を亡くした事、更には親戚の家を盥回しにされた事は決して良い思い出とは言えないだろう。そんな過去を少しでも思い出させてしまった事を土方は申し訳なく思い、謝ったのだった。
葵咲「…いえ、大丈夫です。確かに嫌な事も沢山ありましたけど…良い事もありましたから。」
土方「・・・・・。」
そう言った葵咲の表情は笑顔のはずが何処か儚げで、寂しさを含んでいた。
葵咲「お気遣い頂いて有難うございます。」
土方「・・・・・。」
もしかしたらその笑顔はただの強がりなのかもしれない。だが、土方はそれ以上何も言うことが出来ず、黙ってしまったのだった。
少しの沈黙の後、土方は再確認で言葉を押し出した。
土方「…とにかく、副業は禁止な。」
葵咲「あ・・・はい。」
土方「…別に無理して仕事増やす必要はねぇだろ。自分の仕事こなしてんだから、空いた時間は自由に使え。」
それがその時出来た土方の精一杯の気遣いだった。土方の優しさに気付いた葵咲は、今度は心からの笑顔で頷いてみせた。