第7章 上司が原因のパワハラは上司に相談出来ない。
自室から重そうなベニヤ板を持ち出し、屯所の玄関へと運ぶ葵咲。たまたま外回りに出掛けようとしていた土方は、玄関先で葵咲と出くわした。
土方「ん?おい、何やってんだ。」
葵咲「あ…。土方さん。手が空いてしまったので…。護り屋の仕事も再開出来るかなーと思いまして。」
葵咲が運んできたベニヤ板は、護り屋の看板だったのだ。看板には『護り屋吉田 あなたのボディーガード承ります。』と書かれている。
土方「やめろ。副業は禁止だ。」
葵咲「・・・・・。」
そう言われて残念そうに下を向く葵咲。だが、郷に入っては郷に従え。真選組で働く以上、真選組のルールを守らなければならない。勿論、葵咲は一般事務職となる為、『敵前逃亡は切腹』などの項目は当てはまらないのだが。
護り屋の看板を見て、ふと疑問を抱いた土方は葵咲に問いかける。
土方「そういやぁ…護り屋吉田っつったな。なんで『市村』じゃなくて『吉田』なんだ?」
問われた葵咲は顔を上げて答えた。
葵咲「ああ、旧姓が吉田なんです。」
土方「え″。お前結婚してんの!?」
突然のカミングアウトに動揺する土方。そんな土方には構わず、葵咲はしれっと答える。
葵咲「いえ、してませんけど。」
土方「なんだそれ!?じゃあなんだよ、旧姓って?」
そう言われて、自分の言い方に誤りがあったのだと気付いた葵咲は、慌てて補足説明を行なった。