第70章 隠し通路があるのは隠したい何かがあるから。
「いえ、貴方はもう良い。用があるのはそちらの女です。」
獅童「おいおい、俺にも“大事な役割”があるんだろ?いらねーってどういう事だよ。」
「松島様は寛大なお方です。大人しくその女さえ渡せば、このまま見逃すとおっしゃってくれてます。」
獅童「どういう事だ?」
菊之丞の話では、獅童を身代わりにしようとしているとの事だった。話の筋が読めない。獅童は片眉を上げて怪訝な顔を浮かべた。葵咲は何かに気付いたようにハッとなる。
(葵咲:…まさか!)
「もう貴方には関係のない事です。」
獅童「さっきから大人しく聞いてりゃ好き勝手言いやがって…」
今にも掴み掛かりそうな勢いの獅童。獅童からすれば顔見知りの花魁が多い為、取っ組み合いになれば勝つ自信があった。
だが葵咲の見立てではこの内何人かはサクラ。獅童には自分達の力を隠している可能性が高い。葵咲も流石にこの人数を相手に、刀無しで戦うのは少々荷が重い。しかも先程の吹き矢攻撃で獅童は負傷している。獅童を庇いながらとなると、正直キツイだろう。
そう判断した葵咲は花魁達の隙をつき、獅童の手を引いてその場から走り出した。
葵咲「獅童さん!こっち!!」
獅童「のわっ!」
獅童との乱闘を予想していた花魁達は、まさか葵咲達がこの場から急に逃げ出すとは思っていなかった為、少し遅れを取る。慌てて葵咲達の後を追った。
「逃がすか!追えーーーっ!!」