第69章 嫌な現実からは目を背けたくなるもの。
葵咲「ま、まぁ…そんな事だろうとは思ったけど。」
松島「何格好良く誤魔化そうとしてんの!?明らかに言われて初めて気付いたよね!?」
やはり無理があったようだ。まぁそれはさておき。まさかここで楼主に見つかってしまうとは。
初めて対峙する華月楼楼主を、葵咲は見定めるようにじっと見据えた。
(葵咲:この人が…)
女の勘なのか真選組の勘なのかは分からないが、葵咲の第六感が松島は黒だと言っていた。
葵咲が疑いの眼差しを向けていると、それに気付いたのか、松島は嫌な笑みをニヤリと浮かべる。
松島「客人、勝手にワシの部屋に入ってもらっては困りますな。」
葵咲「入って見られたら困るモノでもあるんですか?」
カマを掛けてみる。こんな簡単な言葉の罠には引っ掛からないとは思うが、何も言わずにただ引き下がるよりはマシだろう。
だがやはり当然の如く、松島は焦る様子もなく、フフンと鼻を鳴らした。
松島「そりゃワシも男だからな。AVの一つや二つ、あるに決まっとろうが。」
袖の下からスッと出したのはアダルトDVD。なかなかマニアックなやつだ。内容の詳細までは分からないが、ジャケ写を見る限りナースのコスプレモノっぽい。それを見た葵咲はドン引き状態。前身鳥肌を立て、自らの腕を抱いて後ずさった。
葵咲「いやァァァ!!変態っ!セクハラァァァァァ!!」
あまりのドン引き具合にちょっぴりショックを受ける松島。売り言葉に買い言葉で言葉を並べ立てる。
松島「遊郭に来て何言うとんじゃ!こんなん序の口だろうが!もっとマニアなのもあるわ!××とか××××とか!」
葵咲「・・・・・っ!!」
あまりのマニアック用語連発にドン引き通り越して絶句。青ざめる葵咲を見て、自分が失言をした事に気付く松島。ハッと我に返り、慌てた様子で前言撤回を試みる。
松島「あっ。いや、ものの例えだから!売り言葉に買い言葉だから!ワシはそんなマニアじゃないからね!至ってノーマルだからね!」
「松島様、自ら性癖暴露しちゃってます。」
慌てて弁解するも時既に遅しだ。その弁明は単なる言い訳のように聞こえて逆効果だった。