第69章 嫌な現実からは目を背けたくなるもの。
獅童は慎重に机の中や戸棚を探る。探った痕跡が残らないように、見た箇所は元通りに戻して。
一方葵咲は豪快に詮索する。本棚の本を抜き取り、中をパラパラとめくっては床に放り投げる。その所作に気付いた獅童はすかさずツッコんだ。
獅童「おいィィィィィ!!明らかに誰か入ったの丸バレじゃねーか!出したモン元に戻せェェェェェ!」
葵咲「何言ってるんです。貴方が天井壊した時点で誰か入ったのは明白じゃないですか。」
獅童「なんで俺が壊した事になってんの!?天井壊したのアンタァァァァァ!!」
まさかのちゃっかり責任転嫁に獅童は驚きながらブチ切れる。
その時、本棚に残っていた本も床にバラバラと落ちてしまった。本を抜き取っていった為にバランスが崩れて雪崩が起きたのだ。
それを見て葵咲は頬を膨らませて獅童を睨んだ。
葵咲「ちょっと、獅童さんが私の手を止めるから何処まで見たか分からなくなっちゃったじゃないですか。」
獅童「えぇっ!?俺のせい!?それも俺のせいなの!?」
葵咲へと目を向けていた獅童だったが、ふと落ちた本に目が留まる。本の間に何かが挟まっていた。獅童は本を手に取り、挟まっているページを開く。そしてそれを見た獅童は目を見開いて絶句した。
獅童「…っ!?」
葵咲「獅童さん?どうし…」
獅童の様子の変化に気付き、葵咲は彼の顔を覗きこむ。声を掛けようとするが、次の瞬間、部屋の扉が勢いよく開け放たれ、その声は遮られた。
「そこまでだ。派手に荒らしてくれたもんだな。」
ドキリ。
一瞬で血の気が引いた。
葵咲が部屋の扉の方へ目を向けると、そこには六十代前半ぐらいの男性が一人、二十代後半から三十代前半ぐらいの男性三人を付き従えて立っていた。
六十代の男性はともかく、一緒にいる若者三人は明らかに堅気の者ではない。葵咲は警戒するようにキッと睨む。
葵咲「誰です?部外者はすっこんでてもらえますか。」
松島「それこっちの台詞ゥゥゥゥゥ!!ここワシの部屋!お前の方が部外者!!」
格好良くキメたつもりが、とんだ失態である。ちょっと恥ずかしい気持ちになった葵咲は冷や汗を垂らしながらも、誤魔化すように深く目を瞑って腕組みしながら言った。