第68章 相談する事は信頼の証。
葵咲「ですが、その条件はお引き受けするわけにはいきません。違法薬物(この件)に関係のない月詠さんを巻き込むわけにはいきませんから。」
獅童「チッ。じゃあアンタが潜入捜査でここに来てる事バラすぜ。アンタに手ぇ出さないって件は火事と薬物、どっちも受諾してもらわねぇと了承しねぇからな。」
そう言って獅童は葵咲を押し倒そうとする。だがその前に葵咲は獅童にしっかり向き直って言葉を放った。
葵咲「その代わり、昨日の件も含めて、私がどちらもきっちりお引き受けします。」
獅童「!」
葵咲「放火の事について副…上司に話したら再捜査してくれると言って貰えました。」
“副長”というワードを使えば真選組とバレてしまう可能性がある。葵咲は言葉の途中で口を噤み、“上司”というフレーズに言い直した。
目ざとい獅童はそこにも触れるかと内心ドキドキしていたが、どうやらその言葉は引っ掛かっていない様子。獅童は高揚して瞳を輝かせる。
獅童「本当か!?」
どうやら葵咲に上司の後ろ盾があるという事が効いたようだ。期待に胸を膨らませた獅童を裏切らないように、葵咲は力強い笑顔で応える。
葵咲「今話して下さった件も私達が捜査しますから。貴方が望む形になるかは分からないけど、必ず事件を解決させると約束します。」
菊之丞を追い出したがっている獅童の望みを叶える事は厳しいかもしれない。だが葵咲の推測どおり菊之丞が放火犯でない事が明らかになれば、獅童も納得してくれるはず。そう思い、少し言葉を濁して承諾したのだった。
獅童は葵咲の意図までは気付かず嬉しそうな笑顔を見せる。葵咲は獅童の笑顔を見て、右手に拳を作って立ち上がった。
葵咲「よし!じゃあそうと決まれば!私は今から楼主の松島さんの部屋に忍び込んで来ます!」
獅童「おう!いってら~…ってちょっと待てェェェ!!なんでそうなる!?」