第68章 相談する事は信頼の証。
それから数日の間を置いて華月楼へ。
潜入捜査は通算五日目になる。葵咲はダメ元で菊之丞を指名するも、やはり受け入れては貰えず…。新造は申し訳なさそうに首を横に振るだけだった。
仕方なく、と言うとまた怒られてしまいそうだが、この日も獅童を指名する事にした。
葵咲「こんばんは。」
獅童「俺の常客になる覚悟は決まったか?」
葵咲「・・・・・。」
またその話か。そんな冷ややかな視線を送る葵咲。あまりの冷たさに地味にショックを受ける獅童。だがすぐに気を取り直して葵咲を見据える。そして葵咲の傍へと擦り寄り、葵咲の顎をくいっと上げた。
獅童「じゃあとりあえず、今夜はお試しでどうだ?快楽の海に沈めて…」
そう言って唇を重ねようとしたその時、葵咲は顎に触れていた獅童の手を掴み、ぐるんと捻り上げて獅童をその場に転がした。
獅童「い…ってぇ!」
葵咲「私は真面目に話をしに来たんです!」
頬を膨らませてムッとする葵咲。それに対して獅童は腰を摩りながら反論する。
獅童「俺だって真面目だっての!つか今何したの!?一瞬で引っくり返ったんだけど!!」
軽々と、いとも簡単にひっくり返された事に面食らう獅童。打ち付けた際の痛みよりも驚きの方が勝っていた。そんな獅童には構わず、葵咲は話を続けた。
葵咲「そういえば、私に言う事を聞けって言った時、望みが二つあるような事言ってましたよね?」
獅童「ああ。一つは美人と楽しみてぇって事な。」
葵咲「もう一つは昨日話して下さった放火の捜査で良いんですか?」
土方から火事の件を調べて貰える約束は取り付けてある。事件について詳しく調べる為に詳細を尋ねようとした。
だが獅童はあっけらかんとした様子で首を横に振る。
獅童「いんや。正直それは期待してねぇ。お前に解決出来るなんて思ってねーし。」