第68章 相談する事は信頼の証。
感情移入すべきではないと分かってはいるが、どうしても信じられない葵咲は躊躇い、言葉を飲み込んでしまう。
葵咲「・・・・・。」
土方「葵咲?」
葵咲「すみません、なんでもないです!」
やはり今日のところはやめておこう。そう思い、踵を返して自分の部屋へと足を向ける。土方はその背を少し寂しそうな瞳で見つめていた。
土方「・・・・・。」
少しの間、葵咲の背を見ていた土方だったが、土方もまた葵咲に背を向けて歩き出した。だが少し歩いたところで、葵咲から声を掛けられる。
葵咲「・・・・あの。」
声を聞いた土方は振り返った。そこには少し照れた様子でもじもじと両人差し指を合わせる葵咲の姿があった。
葵咲「えっと、やっぱり…相談、乗ってもらっても良いですか?」
土方「!」
今まで何かあっても全てを一人で背負い込もうとしていた葵咲。そんな彼女が初めて見せた態度。本当の意味で自分を頼ろうとしてくれている。土方はその事が素直に嬉しかった。
土方はフッと笑みを漏らして力強い返事を返した。
土方「ああ。」