第68章 相談する事は信頼の証。
ここまで一気に話した獅童は、少し息をついて煙管に火をつける。その間に葵咲は頭の中を整理して事件と関連付けて話を組み立ててみた。一応筋は通っている。
(葵咲:少し無理矢理な気もするけど…辻褄は合わなくはない、か。)
獅童の言動や態度を見る限り、嘘を吐いている様子はない。だが少し出来すぎている気もする。まるで菊之丞を疑うように仕組まれているような…そういう餌であるかのような。
葵咲はこの数日菊之丞という人となりも見ている。獅童の話す菊之丞像と重なるようには思えなかった。
ひととおり話し終えた獅童だが、まだ話し足りないといった様子で煙を吐き出しながら言葉を付け加える。
獅童「鳥居が何を企んでるかは知らねぇが、菊之丞と結託して華月楼を利用しようとしてるのは確かだ。人の良い爺は騙されちまってんだよ…!!」
松島を信じるあまり、他が見えなくなってしまっているようにも見える。葵咲は第三者として冷静な視線で獅童へと言葉を投げ掛けた。
葵咲「何か証拠は掴んでるんですか?」
獅童「そんなもんねーよ。俺は警察じゃねぇ。それはお前の仕事だろ。」
葵咲「!」
ポンと話を振られて目を丸くする葵咲。まさかここで自分に返ってくるとは思ってなかった。葵咲が目をパチパチとさせていると、獅童はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
獅童「ここには潜入捜査で来てんだろ?一緒にこの件も片付けてくれるっつーなら、お前に手ぇ出さないでいてやってもいいぜ。」
葵咲「・・・・・。」