第67章 どんな薬にも必ず副作用がある。
断固として引き下がる様子のない獅童。獅童は本当に葵咲の事を気に入っているようだ。それは獅童の発言や態度で分かるのだが、葵咲は何故自分が気に入られているのか、理由が分からずにいた。
華月楼に通うのは四日目となるが、獅童とはほとんど接していない。しかもモテない男ならまだしも、この華月楼のトップを張る男。わざわざ自分に執着しなくてもいくらでも女は寄ってくる。葵咲はその疑問を至ってストレートに投げ掛けた。
葵咲「別に私じゃなくても、獅童さんなら他に沢山良い相手がいるでしょう。それとも、何か別の目的でもあるんですか?何か良いモノを売っている、とか。」
葵咲は獅童が違法薬物売買に関わってる可能性を考え、カマをかけてみた。もしも関わっているのなら少しでも多くの客を取りたいはずだと。そして葵咲の意味深な発言を聞いた獅童は…
獅童「!? アンタ!!」
一瞬で顔色を変えた。それを見た葵咲は眉根を寄せる。
葵咲「貴方も薬を…?」
獅童「なんで俺が絵師だったこと知ってんだ!?」
二人の発言は同時だった。だが同時に出た言葉は全く別のもの。発言したと同時に相手の言葉を聞き、二人とも目を瞬かせる。
葵咲「絵師?」
獅童「薬?何の話だ?俺は薬剤師じゃねぇぜ。」
(葵咲:この様子…やっぱりこの人は関わってないんだ…。)
まぁもともと獅童が関与している可能性は低いと判断されていた。獅童は葵咲の潜入捜査を黙認している。もし違法薬物の関係者だったなら、潜入捜査を黙認したりはしないだろう。だが、敢えて葵咲を泳がせている可能性は無くはなかった。それ故カマを掛けてみたのだが、どうやら外れたらしい。外れた事は大いに嬉しい事ではあるが、先程葵咲は思わず“薬”のワードを口に出してしまった。葵咲は慌てて話をすり替える。
葵咲「どうしてそんなに売上に拘るんですか?」
獅童「おい。さっきの薬の話はどうした。」
すかさず投げ込まれるツッコミ。だがここで折れるわけにはいかない。葵咲は獅童の言葉を無視してシラを切りとおそうとする。
葵咲「稼ぎもダントツみたいですし、そこまで気にしなくても良いんじゃないですか?」
獅童「無視ですかコノヤロー。」