第67章 どんな薬にも必ず副作用がある。
違法薬物の売買に関与しているのではないか、と。葵咲がどのように獅童から情報を引き出そうかと考えていると、獅童は話を別の話題へと切り替えてしまう。
獅童「けどお前、ホント肝の据わった女だな。俺のブチ切れたトコ見てんのに指名してくるなんてお前が初めてだぜ。」
葵咲「そうなんですか?」
突然話を変えられてきょとんとしてしまう葵咲。目をぱちくりさせていると、獅童が補足を付け加える。
獅童「普通ビビって別の奴に代えるだろ。」
葵咲「んーでも私の周りはいつもあんな感じですし。」
獅童「おいおい、どんな環境で生活してんだよ。」
思わずボソリと素でツッコんでしまう獅童。まぁ獅童じゃなくてもツッコミは入れてしまうだろう。“いつも周りがケンカしている雰囲気”というのは、にわかには信じ難い。ツッコミを入れたというよりは、純粋にその環境が気になって尋ねた。だが葵咲がそれに答える様子は一切なく、仕方なく獅童は自ら話を変える。
獅童「で?俺の常客になんのか?」
葵咲「…そうですね、これからは貴方を指名しても良いですよ。」
獅童からの質問に対し、手を顎に当てて唸りながらも前向きな答えを出す葵咲。それを見た獅童はパッと表情を明るくする。
獅童「おっ、マジでか♪じゃあ早速…」
喜んだ獅童は、すかさず葵咲に手を伸ばすが、それを葵咲はパシッと払いのける。そして少し口を尖らせながら獅童の言葉を遮るように言った。
葵咲「何もする気はありませんよ。勿論、それだけのお金は払います。貴方は何もしないでお金を得られる。良い条件じゃないですか。」
獅童「勘違いされちゃあ困るね。俺は確かに売上伸ばす為に接客数こなしちゃいるが、アンタは別だ。アンタは金の為じゃねぇ。ガチで楽しみたくて常客に誘ったんだ。」