第67章 どんな薬にも必ず副作用がある。
心配させまいと思って言った発言だったが少し無理があったかもしれない。だがまぁ葵咲としては本当に気にしていないのは確か。それを感じ取った獅童は葵咲の左手を取り、チュッと傷口に唇を落とす。
葵咲「ちょ!獅童さん!?」
獅童「舐めてりゃ治るんだろ?じゃあ俺が舐めてやる。」
獅童は包帯をほどき、傷口に舌を這わせた。
葵咲「だ、ダメです!やめて下さい!」
獅童「俺を指名したんだ、たっぷりサービスしてやるよ。」
向けられる眼差しは真剣そのもの。葵咲の腕を掴む手に力が入る…。獅童が葵咲をゆっくり押し倒そうとすると、葵咲は眉尻を下げながら言った。
葵咲「いえ、そうじゃなくて。そこたっぷり薬塗ってますけど…。」
獅童「そういう事は早く言えェェェェェ!!おぇぇ。」
自らの首を掴みながら舌を出す獅童。今度はぺっぺっと唾を吐きながら葵咲を睨んだ。
獅童「ったく、ホンットお前は遊郭に似合わねぇのな!」
葵咲「いや~それほどでも~。」
照れたように頬を赤らめながら頭をポリポリと掻く葵咲。それは何処かで見た事のあるキャラクターだった。獅童はすかさずツッコミを入れる。
獅童「クレしん!?褒めてねーよ!!」
クレヨンしんちゃんそのものだった。一向に雰囲気が出ないその場に獅童は大きなため息を吐く。そして頭をガシガシと掻きながら、再び申し訳なさそうな顔を浮かべた。
獅童「いや、その、本当に悪かったな。…俺が稼ぎは一番のはずなんだ。けど…変わらねぇ日常にイライラしちまってよ。」
葵咲「獅童さんの方が菊之丞さんより売上成績良いんですか?お二人は華月楼の人気を二分してるって聞きました。」
獅童「確かに人気はどっこいだな。だがあいつは客を選ぶ。俺は選ばねぇし、数こなしてるから売上は俺が上回ってるはずなんだ。」
その話を聞き、葵咲の中で ある疑念が浮かぶ。
(葵咲:…売上…もしかしてこの人も…?)