第67章 どんな薬にも必ず副作用がある。
とある花魁の部屋。
その花魁はヒクヒクと引きつった笑顔を浮かべている。その花魁とは…。
獅童「で?あいつに拒否られたから俺を指名したと?」
菊之丞に迎え入れてもらえなかった葵咲は獅童を指名したらしい。獅童は葵咲を入れてはくれたが、ご機嫌斜めな様子。だが葵咲はそんな獅童にはお構いナシに平然とした態度で言った。
葵咲「はい。しゃーなしです。」
獅童「華月楼売上ナンバーワンの俺を捕まえて良い度胸してんじゃねぇかコノヤロー。つーかお前よくその理由で俺を指名出来たな?この間のいざこざ見てただろうが。」
獅童が引きつり笑顔を浮かべている理由はこれだった。獅童が良くて指名を代えたのではなく、菊之丞に入れてもらえなかったから獅童へ指名変更。
先日の一件で獅童が嫌がるのを知っていた葵咲としては、獅童からも門前払いを喰らう事を覚悟の上で指名した。葵咲自身、まさかすんなり入れて貰えるとは思ってなかったのだ。
その疑問を葵咲は口にする。
葵咲「そういえば、この間みたいに怒らないんですね。」
獅童「・・・・・。」
その問いに獅童は眉根を寄せて頭を掻く。そして少し言いづらそうに言葉を押し出した。
獅童「…怪我はもういいのかよ?」
葵咲「え?あ、はい。大丈夫ですよ。」
一番隊隊士として前線に立つ葵咲は、あれくらいの傷は日常茶飯事。傷を負った事自体忘れていた。だが葵咲が真選組隊士である事等知らない獅童は、葵咲の言葉を素直には受け入れられずに尚も申し訳なさそうな顔を向けている。年頃の娘に傷を負わせてしまった事に責任を感じているのだろう。葵咲はフッと笑顔を向けた。
葵咲「かすり傷でしたし。こんな傷、舐めてれば治りますよ。」
獅童「すげぇ血が出てた記憶があんだけど。」