第67章 どんな薬にも必ず副作用がある。
土方「だから今回の件は慎重に…」
そこまで発言したところで、葵咲は拳を作ってその場に立ち上がる。最後の土方の台詞は耳には届いていないようだ。
葵咲「私!明日菊之丞さんに協力得られないか話してみる…!」
土方「おう。って待てェェェ!慎重につってんだろうがァァァァァ!!」
思わずノリツッコミしてしまう土方。この局面でそんな台詞が出てくるとは思ってなかった。菊之丞が弱みを握られていたり、脅されている可能性は濃厚だが、まだ確定ではない。菊之丞も自ら進んで関わっている可能性だってあるし、そもそも菊之丞とその男が被疑者かどうかさえ定かではないのだ。そんな状況で菊之丞に話してしまえば、話が露見してしまう。そうなれば今回の捜査そのものが水の泡である。
だがそんな土方の考えを読み取れない葵咲は笑顔で答えた。
葵咲「大丈夫!慎重に悟られないようにするから!」
土方「そういう事言ってんじゃねぇだろ!もっと証拠を固めてからじゃねぇと逆に足元掬われるつってんだよ!!」
猪突猛進型の葵咲は、“コレ”と決めたらゴールまで一直線。土方の言葉は全く耳に届いていなかった。葵咲は笑顔を浮かべながら土方の部屋を出て行く。
葵咲「じゃあ明日に備えてもう寝ます!おやすみなさい!」
土方「人の話を聞けコルァァァァァ!!」
土方も慌てて立ち上がり、部屋から顔を出して葵咲を呼び止めようとする。だが、自分の部屋のある離れへと走っていく葵咲は早く、もうその姿は遠くなっていた。それを見た土方は舌打ちをした。
土方「チィ、あの馬鹿!こりゃこっちも事を急ぐ必要があるな…。」
そうして土方は山崎を呼びつけ、今後の方針について話し合う事にした。