第67章 どんな薬にも必ず副作用がある。
土方「普通の薬物とはちょっと違うらしい。」
葵咲「それってどういう…?」
普通の薬物についても詳しい知識は身につけていない。少し首を傾けながら土方の目をじっと見据える。土方は詳細について語り始めた。
土方「本来、大麻や麻薬の類は使用した時に快楽を得る。そしてそれに依存していき、いずれは幻覚・幻聴を引き起こすようになり、最期には自分(テメー)の身体が壊れていくってモンだ。だが今回取引されてるのは、そういう依存性はないらしくてな。」
葵咲「じゃあどんな状態になるんです?依存症がないなら別に良いんじゃ…。」
土方「これについても、それ以上詳しい事は分からねぇ。ブツを手に入れてねぇからな。だが薬は薬だ。身体を壊さねぇなんて保障はないし、どんな副作用があるかも分からねぇ。幕府が正式に承認してねぇモンを裏で販売させるわけにはいかねぇだろ。」
葵咲「・・・・・。」
土方の言う事は最もだ。葵咲としても薬に対して良い印象は持っていない。反論するつもりは無く、静かに頷いた。
そして葵咲は少しの間考え込むよう俯き、やがて畳の上に視線を落としたまま静かに言葉を押し出した。
葵咲「土方さん…私は、菊之丞さんが自ら悪事に加担しているようには思えません。まだ二、三日の付き合いですが、どうしても悪い人には思えないんです。」
土方「・・・・・。」
真剣に語られるその瞳に嘘はないと感じる。哀れみや情から菊之丞を庇っているようにも思えない。
土方は葵咲の表情をじっと見つめ、黙って聞いていた。葵咲は視線を落としたまま続ける。
葵咲「脅されて、無理矢理加担させられて…それで罰せられるなんて…。」
あんまりだ。
心を傷めて辛そうに顔を歪める葵咲。事情にもよるが、土方も葵咲の気持ちには同意出来た。
土方は考え込むように黙り込む。そして眉根を寄せて言葉を押し出した。