第66章 男心を掴みたいならまずは胃袋を掴め。
昨日の葵咲、山崎、銀時、月詠のやり取りを目撃していたのは獅童だったのだ。
そのときの状況を獅童は詳しく説明する。その説明を聞いて、単なるカマ掛けではない事が分かり、観念するより他になかった。不幸中の幸いは、山崎との会話の前半を聞かれていなかった事。違法薬物の調査で入った事はバレていないらしい。
葵咲は頭をポリポリと掻き、眉根を寄せる。
葵咲「で、対価はなんですか?」
楼主や他の者に話さず、葵咲を助けて誰もいない部屋へと連れ込んだのは交換条件があるのだろう。黙っていてやる代わりに何かをしろ、と。どうやらその通りのようで、獅童は大人しくする葵咲の態度を見て至極満悦の様子だ。
獅童「おっと、話が早くて助かるね~。」
葵咲「貴方の常客になる事ですか?」
初見でしつこい程にせがまれた。その事だろうかと訊いてみるも、的を外した様子だ。獅童は顎を撫でながら視線を上に逸らす。
獅童「ん~それも悪くねぇんだけどな。いや、それも入れちまうか。バラされたくなきゃ俺の言う事を聞け、これでどうだ?これなら俺の望み二つ叶う。」
嬉しそうにニヤニヤする獅童を前に、葵咲は口を真一文字に結んで即答する。
葵咲「却下。」
獅童「えぇぇ!?なんでお前が却下すんの!?」
まさかそんなフレーズが飛び出てくるとは思いもしなかった。出てくるとしても交渉のような言葉だろう。下の位置にいるはずの葵咲から却下されて思わずツッコんだ。それに対して葵咲は頬を膨らませながら文句を言う。
葵咲「だってズルイじゃん。」
獅童「ズルイとかそういう問題じゃねーの!お前は脅されてんの!」
葵咲「じゃあ公平を期す為に、私の望みを三つ叶えよ。」
ばーん!
葵咲はONE PIECEのハンコックのような態度で獅童を見下そうとする。見下しすぎて逆に見上げていた。そのデカイ態度に獅童は激怒した。