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銀魂 - 雪月花 -

第65章 『お客様は神様』って台詞は店側が言う台詞。


菊之丞の部屋へと辿り着くと新造は葵咲を部屋の中で待つよう促す。そして自分はさっさとその場を立ち去った。これはまたとないチャンスだ。葵咲は菊之丞の部屋に怪しげな薬物等がないか調べようと試みる。だがすぐに部屋に近付く足音が聞こえてきた為、室内を調べる事は叶わなかった。部屋の扉が開き、菊之丞が部屋へと入る。葵咲は何事もない様子で菊之丞を迎えた。

菊之丞は葵咲の前に腰を落とし、先程簡単に施した止血処置を丁寧にやり直す。その仕草はとても手馴れていた。普段戦いに身を置き、傷の手当を見慣れている葵咲でさえも感心する程。葵咲の視線には気付かず、菊之丞は眉根を寄せながら発言する。


菊之丞「全く貴女という人は…何故こんな危険な真似を。」

葵咲「大丈夫ですよ。こういうのは慣れてるので。あの人にも幸せ分けてあげて下さいね。」

菊之丞「・・・・・。」


“あの人”とは勿論、先程の菊之丞の常客の事だ。葵咲の言葉を受け止める菊之丞は手当てをしていた手を止め、考えるように俯く。そして押し出すように言葉を返した。


菊之丞「幸せって…何なんでしょうね。私が言うのも何ですが、こんな場所に来て、偽りの愛を貰っても幸せになれるとは思えません。」


菊之丞の言葉は葵咲に向けて放ったというより独り言のように聞こえる。だが葵咲はそんなすり抜けてしまいそうな言葉でさえもしっかりと受け止め、自らの意見を言葉にする。


葵咲「幸せが何かを決めるのは周りの人間じゃないですよ。受け取る本人です。幸せの形なんて人それぞれですから。富や名声を勝ち取る事が何よりの幸せだと考える人もいれば、逆にそれが窮屈だと感じる人もいる。お金が無いと幸せになれない人もいれば、お金なんかなくても人との繋がりだけで幸福を感じている人だっています。価値観なんて人によって違います。だから、菊之丞さんが幸せだとは思えない事でも、あの人にとっては幸せな事も、あると思います。」


葵咲の意見に真剣に耳を傾ける菊之丞。菊之丞は葵咲の目をじっと見つめながら少しの間沈黙を落とすが、やがてゆっくりと口を開いた。
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